AIを使えば、PowerPointを作ること自体は、これからますます簡単になっていくと思います。
では、AIに、
「患者さん向けのPowerPointを5枚作ってください」
と頼んだとき、その医院が大切にしている考え方や、院長先生らしい言葉まで反映された資料を作ることはできるのでしょうか。
今回、CREDISTA™ Labでは、実際の医療機関を想定した環境で検証を行いました。
最初は、公式サイトだけを情報源にしました
最初の検証では、医院の公式Webサイトに公開されている情報だけを情報源として、初めて来院を検討する患者さん・保護者の方向けのPowerPointを作成しました。
医院理念や診療内容など、公開されている情報を整理してPowerPointにすることはできます。
しかし、それだけでは分からないことがあります。
院長先生が普段、患者さんと接するときに何を大切にしているのか。
どのような言葉を使うのか。
逆に、どのような表現は使いたくないのか。
そこには、Webサイトだけからは分からない、その医院固有の情報があります。
CREDISTA™では、こうした本人・企業・組織にしかない一次情報を原本(SOURCE)として捉えています。
院長先生本人のSOURCEを加えてみる
そこで次に、過去に院長先生本人から回答いただいていた情報をSOURCEとして加えました。
医院の理念だけではありません。
院長先生が大切にしていること、患者さんへの考え方、普段使いたい表現、避けたい表現、患者さんをどのように呼ぶか。
こうした情報を加えて、もう一度PowerPointを作りました。
すると、同じ「医院について説明する5枚のPowerPoint」でも、公開情報だけを使ったときとは違い、院長先生本人の考え方や言葉を資料へ反映できる可能性が見えてきました。
ここで重要なのは、AIに院長先生らしい言葉を想像させることではありません。
本人が実際に語ったSOURCEを、AIへ正しく渡すことです。
毎回、長いプロンプトを書く必要があるのか?
次の課題はここでした。
SOURCEを毎回長いプロンプトへ貼り付けなければならないのであれば、忙しい医師やスタッフが日常業務で使うには負担があります。
そこで今回は、医院固有のSOURCE/CONTEXTをGoogle Driveに整理し、AIから必要なときに参照する方法を検証しました。
SOURCEには本人・医院固有の一次情報。
CONTEXTには、呼称や表現ルール、PowerPoint作成時のルールなどを整理します。
さらに、現在使用する情報と過去の情報を混同しないよう、
CURRENT(現在使用する情報)
と
ARCHIVE(過去の情報)
を分けて管理する方法も試しました。
そして、指示を短くしてみました
環境を整えた後、PowerPointから次のような短い依頼をしました。
Google Driveにある医院のSOURCEを参照して、医院の考え方を初めて来院を検討する患者さん・保護者の方向けに説明するPowerPointを5枚作成してください。
長い医院理念やプロフィール、表現ルールを、もう一度すべてプロンプトへ入力しているわけではありません。
Google Driveに整理したSOURCE/CONTEXTを参照しながら、PowerPointを作成するところまで実機で確認しました。
ここで、今回の検証で目指していたものが少し見えてきました。
AIを使うために、医師がプロンプトの専門家になる必要はないのではないか。
その前に、AIへ渡す医院固有のSOURCEとCONTEXTを整えておく。
そうすれば、
「保護者の方向けに5枚作って」
「もっとやさしく説明して」
「3枚目だけ修正して」
といった、日常の仕事で誰かにお願いするような言葉からAIを使える可能性があります。
ただし、AIに任せきりにはしません
医療機関で利用する以上、ここは非常に重要です。
今回の仕組みでは、
SOURCE(医院固有の原本)
→ CONTEXT(AIに渡す文脈・ルール)
→ AI(生成AI)
→ PowerPoint(資料作成)
→ HUMAN REVIEW(人による最終確認)という流れを基本にしています。
AIが作ったPowerPointを、そのまま患者さんへ公開することを前提にはしていません。
医療情報、医院情報、院長先生本人の考え、表現などを、最終的に人が確認します。
また、今回のSOURCE活用では、患者さん個人を特定する情報や診療情報を扱うことを目的としていません。
医院理念、院長先生本人の考え方、医院の公開情報、患者さんへの伝え方など、医院運営や情報発信に利用するSOURCEを対象としています。
PowerPointを作ることが、ゴールではありません
今回の検証を通して、もう一つ分かったことがあります。
価値があるのは、PowerPointファイルだけではありません。
PowerPointを作る過程で、
「私たちの医院は何を大切にしているのか」
「患者さんにどんな言葉で伝えているのか」
「AIに何を任せ、何を任せないのか」
がSOURCE/CONTEXTとして整理されていきます。
PowerPointは、そのSOURCEを実際の仕事で使う最初の出口の一つです。
将来、同じSOURCEが別の実務にも活用できる可能性があります。
だからこそCREDISTA™では、
AIに何をつくらせるかではなく、AIに何を渡すか。
を大切にしています。
実証から、小さくサービス化へ
今回の検証をもとに、CREDISTA™ Labでは、
「医療機関向け|医院らしさをAIに引き継ぐ SOURCE × PowerPoint 実践パック」
のテスト提供を始めます。
いきなり大規模なAIシステムを導入するのではありません。
まず医院固有のSOURCEを整理する。
AIが参照できる形にする。
そして、日常的に使っているPowerPointから実際に使ってみる。
使ってみて、
「これは医院らしい」
「ここは違う」
「この言葉は普段使わない」
という反応を確認し、またSOURCE/CONTEXTを磨いていく。
今回の実証も完成形ではなく、そのスタートです。
CREDISTA™ Labでは、これからも実際に試しながら、人・企業・組織固有のSOURCEをAI時代の仕事へどう実装できるかを研究していきます。
AI時代の「対話デザイン」専門家/CREDISTA™ コーチング代表 前田浩一
ブランディング、教育・福祉、Web・AIなどの経験をもとに、AEO・Web・AI活用などを実際に試し、検証しながら、仕事で使える実践知や方法を研究・発信しています。